2020年8月 8日 (土)

転生した大聖女は、聖女であることをひた隠す ― 愉快痛快大誤解 ―

   おかあさんもはやめに連休突入ですって、じつは夏風邪で頭とのど痛かったので3日寝て暮らしました。いやほんとただ純粋に寝てた。

   いやいや、それで、なかなかケッサクに出会ったのでご紹介。

   「転生した大聖女は、聖女であることをひた隠す」十夜。原作はなろう。コミカライズはアース・スターでやってます。「魔王の秘書」とか、「戦国小町苦労譚」の。今回も戦国小町の更新見に行って拾ったの。

   転生聖女ものですが、現代日本は関係なし。その異世界で、騎士になりたいと絶望的な努力を積むヒロイン、フィーアちゃんが、死の間際に自分が300年前の国を救った大聖女だったことを思い出して、なかったはずの聖女パワーで成り上がる話

   オリジナルな味付けは、その300年前の大聖女は、魔王封印のクライマックスで自分が支援して苦楽を共にしてきた兄王子たちに裏切られて、敵地に捨てられ、魔王の残党に恨みをぶつけられて惨死したってとこ。死に当たっては、「聖女として転生したらまた殺しに行く」と呪いをかけられたことを現在まざまざと思い出してしまったということ。15の、成人の試練の最中のいたいけな乙女がですよ!

   しかも、そのせいでせっかく思い出して使えるようになった聖女パワーを親兄弟同僚上司にも隠し通さなくてはならないハンデ!

   あと、物語前半は。前世を思い出すきっかけ、死に瀕した魔獣を助けたら、それが伝説の魔物、黒竜で、そんなものと契約してしまったらVIP扱いになり、魔力の源を探られて前世がばれるから黒竜ザビリアのことも隠し通さなくてはならないというダブルハンデがついてました!

   騎士能力もほっとんどないせいで騎士の脳筋ファミリーにはネグレクトされていたのになにこの天然ポジティヴ、洗練された宮廷人としての高度なイヤミや皮肉(騎士と疑わしいぐらいみんな言語表現力とネゴシエイション力がある)も非常識なほどの鈍感さでスルーして楽しく騎士団生活送れてしまうのは尊敬します! この誤解と鈍感のすれ違いっぷりがたまらない!

   そして、少女漫画の古典パターン、ヒロインが信じられないほどの清らかなポジティヴさで人の心をつかんで受け入れられていくというのを騎士団ものとしてやってくれるのでした。当然、色とりどりの美形逆ハーレムが形成されますが、その持ち上げられ方は胸がかゆいラヴロマンではなく悶絶爆笑ものです。王族の血を引くエレガント団長もワイルド美形団長もウソでしょッとキリキリさせられていつもと違う面を見せてくれるおかしさ。かえって、キラ効果付き王子様の同僚騎士が最初から変わらずほんわりと癒しになっているのが貴重なくらい。

   そのうち、兄王子たちに裏切られたあと、300年の年を経て聖女というものがイヤな感じに変わってしまった社会背景の謎も解いてくれるのでしょうか。フィーちゃんが「くそったれ」と評して団長さんたちを瞬間冷凍してしまうような。

   秘密がばれたら殺されちゃう! はずなのにあんた秘密を守り切る気ないやろ、というふうに突発時には聖女パワーをいかんなく解放してしまい、どんどん聖女ばれしていくフィーちゃん、20人いる騎士団長さんたちがどんどん秘密を知っていって真っ青になりながらフィーちゃん対策に頭を悩ませるのが、「本好きの下剋上」の4部あたりに似ているかもしれません。

   いやー先行き楽しみな元聖女様です。

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2020年7月12日 (日)

ミステリと言う勿れ ー 大丈夫マイフレンド ー

   いやあの映画見てない。
   ネットをいろいろ閲覧してますと、増えましたねえ、各種オンラインコミックの広告。うっかり踏んでいろんなコミックの出だしだけ読まされちゃう。

   今回はそういうカンジでよく最近目に入る「ミステリと言う勿れ」田村由美。骨太な物語で有名ですが絵があんまり好きじゃないので読んだことなかったわ。既刊一気したけどやっぱり好みじゃなかったわ。見せゴマはきれいだけど、どうでもいいところはホント雑で、でも、何が描いてあるか、どう見せたいかはわかるから巧いんでしょう。でも好みじゃない。骨太美形もね。

   広告部分は、主人公カレー大好き安楽椅子巻き込まれ探偵の久能整(くのうととのう)くんが、野暮用で乗った新幹線で隣になった知らないおねえさんの手紙を見るともなしに横から見ていると、本文に可愛いイラストがついている、過去分みんな読み返してるけど、どのお手紙にも。とくに意味もなく付いてるこのイラストのアイテム、頭文字だけ抜き出すとなんだか穏やかでない言葉になってる、暗号では……? という、実に続きを読ませたくなるセレクトです。

   勇んで購入してコミックを頭から読んでみると、それはエピソード3で、物語は整くんが自宅から高校時代の級友(?)殺害容疑で任意同行を求められるところからでした。

   海千山千の捜査員たちに高圧的に犯行を決めつけられる中、へーぜんと、のらりくらりと、上げ足をとったり捜査員たちの会話に割り込んだりして状況を読み、見事に事件を解決して自らを解放した1話は素晴らしかったです!

   人の心理を深く読み取り理解して状況を解き明かす、そして、それだけでなく、現代の物事への風刺やらちいさな問題提起とかがあって、読んでいてすっとする、ためになる、そういう謎解き系のミステリ。

   なんでいじめられた方が転校しなきゃならないの?

   コミュニケイション能力ないんだなんてひとかどのキャリアもってるいい大人が言うな、使う相手を限ってただけでしょ?

   ヴァージンロードってなんでお父さんがエスコートするの、お母さんの立場は?

   女の幸せって男がいう言葉に騙されるなよ?

   ……空きページの名セリフかるたにはこういう言葉の方を選んでほしいなあ。

   タイトルは謙遜が過ぎるんじゃないかな、大丈夫、十分ミステリしています。

   しかし、それ以上の、問題提起があるという意味かな。たしかに、「ミステリと言う勿れ」。

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2020年5月24日 (日)

「異世界に救世主として喚ばれましたが、アラサーには無理なので、ひっそりブックカフェ始めました」 ー 異世界にはアラサーから ―

   タイトル長げぇよ。読点まで入ってる。

   最近のおかあさんはもう家事はほとんど投げて、おうちに帰ったらもうなろう小説を読むこととブラウザゲームをすることしかしてません。いやマジ。勤労と納税はしとるからええやろ。子供を学校に通わすことは最後はおじいちゃん(と奨学金)に投げたけど。

   そのなろう小説ですが。異世界に行って英雄になるってのも、若さに任せてチャンバラやればいい時代は終わり、今は、アラサーである程度経験を積んだ人が、その知識と経験をもとに頑張っています。

   「宝くじで40憶当たったんだけど異世界に移住する」カズラさんは、異世界と往復できるトンネルもさることながら、やはり40憶をパワフルに使いこなす大人の経験と知恵あってのことでしょう。荷物運ぶ道具が欲しい→道端にリヤカー放置→札ビラ切って借りていくとか、水車欲しい→業者探す→断られそうになると前金即金で押し切るってところは中学生には無理でしょ。

   「理想のヒモ生活」の善治郎さんも、ブラック企業でいろいろ経験した結果の交渉力や判断力がかれをただの「女王のヒモ」以上の油断ならない優秀な王配たらしめています。最初に召喚されて白羽の矢が立った事情を聴いて、自分に求められることを的確に推理して交渉するあたりがすごい。この作品の第一の見どころは婿入りまでにあります。魔法の絨毯で持ち込んだ現代日本の文明のチート(ずる)もあるけどね。

   「異世界のんびり農家」のヒラクさんも、一農夫としてのんびりしたいとかいいながら、いざという時の調整力や胆力(そして武力)でガルガルド魔王国の一部地域ではなくてはならない存在になってますしね。ヒラクさんが在職中どんなご苦労なさったかはあんまり描かれてないけど(長い療養生活のせいもあろうが)、その分仏のような寛大さ、動じなさがつちかわれちゃってる。ヒラクさんの魅力は「そうなのか?」でスルーして、「じゃあこうしよう」っておっとり受け入れて対応しちゃうところね。竜が来ようが呪いの岩が発掘されようが。

   やっぱり、読者は疲れた勤め人? なので、うまくいかない日常といえどもその積み重ねは無駄なことではない、自分の中に何かは残っていて、いざとなったらそれで社会に貢献して認められるのだと思いたいんですね、わたしもです。

   さて、表題作「異世界に救世主として喚ばれましたが、アラサーには無理なので、ひっそりブックカフェ始めました」の水森月奈さんもある意味豪傑。

 「え? 異世界転移?
  嫌です」

  お、おう。それなりに生きていけてるアラサー社会人なら環境の激変は望まないわな。こちらの世界から転移した救世主だけが使える大魔法があるので、それで世界を救ってもらいたいって、現れた神様(と名乗る球体)は必死に口説きます。もう静かに暮らしてもらうだけでいいからって、なにの投げ売り? 異世界からの人間の魔法でないとと安定できない世界って世界として破綻しとるやん。おまえその世界の神として恥ずかしくないんかとわたし思いますけど。
 
  そのへん、やはり血気盛んな中高生ではないので月奈さんきれーに論破して拒否りますが、

  「代わりに君の願いはなんでも叶えよう」って、神様も必死。

  したたかな月奈さん、そこはよく考えつつ、自分に向いてる転移先をいろいろリクエスト、願い事もよくよく吟味して、その他追加の願い事をカタログで通販するノリで手に入れられるペンダント(神様が細かい要求に根負けしてプレゼントしてくれた)までゲットして、準備万端の転移です。もう、このイントロだけで思いっきり読みでがありました

   そして、月奈さんが趣味と実益で選んだのがブックカフェの店主でした。

   えーとあのー食べ物飲み食いしながら本を読むって、「本好きの下剋上」の麗乃さんに怒られそうなんですが。いまこういう形態のお店ってあるんですか、10年? ほど前、書店に喫茶店が併設されて、お会計前の本も持ち込んで読める? とかいうの見聞きしたかもですが、図書館に入る前には手を洗う、物を飲み食いしながら借りた本を読まないとか叩き込まれた世代なんで(自分の本は当然左手に持って読みながら飲み食いしますけど)、なんか微妙。お行儀悪いんじゃないの? わたしはこういう形態のお店利用したことないです。学生用カフェレストランで置いてあるジャンプよみながらスパゲティ掻きこんだことはあるけど。

   地球だって近世に至るまで本は貴重なんで、ものを飲み食いしながら閲覧ってのはあり得ないと思うんですが。うーん、それで物語世界の登場人物はありがたがっているからいいか。とりあえず月奈さんのお店の本は汚れないよう魔法がガードしているそうです。

   まあ、お客はほとんど、相手役のイケメン騎士イルしか来ないし。

   もう一人、この世界には先に転移した救世主ちゃんがいて、全然自覚がなくちやほやされることだけを享受するダメ異世界人だったので、お城のみんなはストレスが限界、イルもそれで癒しを求めてこの店にたどり着いたという事情がありまして。

   本好きの二人は運命の出会いに心を寄り添わせていくのでした。

   このへん、疲れたイルに対し最初のお客さんだからときめ細やかなサーヴィスをするのがぴたりぴたりをはまってゆくあたりがだいご味。やっぱ社会に出てそれなりに揉まれているからこそのサーヴィスです。……まあ、居心地の良い場所を提供して、おいしい食事を出して、ほんの少し、癒しの魔法もかけて、とままごとっぽいですけどね。

   神様としては、月奈には普通にこの世界に存在してくれるだけでいいらしいので、ブックカフェが採算取れてるかどうかは問題ないんだろうな。お会計とか、仕入れとか、細かいところはスルーでした。いいのかこんなんで。

   そして、彼女の対照として、自覚も覚悟もないもうひとりの救世主のダメダメっぷりも描かれてゆき、世界はとうとう破滅を迎えます……。

   月奈は平凡な異世界ライフを守り切れるのか!?

   もう一人のダメ救世主や、彼女を受け入れ甘やかしてしまう王子など、固有名詞さえない割り切りっぷりのシンプル電車道な物語。あっさり終わりますけど、それだけに終わったときにはガッツポーズが出ました。これでいいよ。足りないぐらいでいい。お幸せに! 

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2020年5月13日 (水)

最後のレストラン ー 横からどや顔 ー 

   自粛づかれなどの言葉もささやかれる中皆さまいかがお過ごしでしょうか。おかあさんは本日はおさぼりです。こないだ雪降るほど寒かったのにもう真夏日かい!? 身体がどうかなるわ!(雪がふったのは3月下旬です)

   さて、書店が閉まってても書籍も発売日は粛々と訪れ、またしても新刊が出ました。電子書籍で買いました。

   「最後のレストラン」藤栄道彦。もうはや15巻に突入です。
    親の残したレストランをなんとかこんとか回しているオーナーシェフの園場凌(そのばしのぐ)クンのお店は、歴史上の人物が今わの際によくタイムスリップしてくるというマジカルなお店。今日も有名無名の偉人が現れておいしいものに癒されたり園場クンにありがたい言葉をかけてくれたりするのでした。

   連載最初はそのころ流行りの偉人召喚バトル漫画「ドリフターズ」と登場人物が被っていたものでしたが、向こうが連載止まってる? 間にもこちらは巻を重ねて、被ってるどころかもう古今東西有名どころはみんな出尽くして、ネタ切れ感を感じてきていたのですが。いやいや。

   ここへきて、どうも新刊15巻は文豪シリーズ。ドイルに漱石やらシェイクスピアやら。前巻14巻では最後の大物(?)ケネディが巻中ぶっとおしでご出演して、さらに召喚された他の偉人、チェ・ゲバラなど同時代人やイシンノゲンクン大久保利通と絡んだりしてくれて二度おいしい作りです。そういえば、大河サーヴィスで西郷さんが召喚されたときも、光秀さんと絡むシリーズがありました(12巻)。作者さんもいろいろ工夫しているようで応援したいです。

   作者さんご自身空きページの解説で語っていますが、一般的な評伝をひっくり返して、実はこういうところもあったのよ、というのを描いてくれているのでまいど得をした気持ちになります。エリーザベト皇后が足ることを知らない無駄づかいエンプレスだったとかね。
   
   そして、偉人との触れ合いを経て(園場クンはかたくなにそっくりさんと言い張ってますけど)、園場クンじしんもいろいろ成長して、レストラン初期メンバーに加え、帰れなかった被召喚者のジャンヌ・ダルクや安徳天皇、出戻ってきた同窓の女性料理人、ソムリエ親娘や2号店3号店の人たちまでしょって立とうとし始めたのには感嘆を禁じられません。一話完結ものとはいえ、少しずつ、人間変わっていかないとね。でも、お見合い相手の好美さんを取るか、自分を慕ってくれているジャンヌをとるか、黙ってつかず離れず召喚者たちのことを教えてサポートしてくれる前田嬢(マルチリンガルの才女で被召喚者のプロフィールを教えてくれる。初期は通訳も)は園場クンのことどう思ってるのか、シェフより威張ってる同窓の御奴さんは園場クンとどうこうなる気はないのか、よく考えたらハーレムじゃんこれ!

   時事ネタも多少さらっと混ぜてあって、フランス料理も毎回お題に合わせてなるほど、というものを用意してくれて、そして歴史について、人生について、やられた! と思わせる名回答を見せてくれて。いやいやこれすっごい密度濃いですよ!

   クールジャパンで、よその国の方に漫画をご覧いただくなら、こういう作品も混ぜといてほしいです。

   日本は、古今東西の偉人についてこれくらいのお遊び(描いて面白がれる)ができる程度には教育水準が高く、個々の人物について、いいことも、悪いことも調べて描ける程度には自由ですと。そして、ただの評伝ではなく、面白おかしく、お料理に絡めて目にも楽しく読めるような作品を生み出せる作家がいるのですよと。

   自分は生み出す側でなく享受する側ですが、とりあえず欠かさずお金を払い、そして折を見てこういうところでアピールする、どや顔でね。それくらいはするつもりです。このあとどうなるか考えるとこわいけど、空前の繁栄をしていた漫画の国ジパングの住人としてね。

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2020年5月 6日 (水)

おおカミよ

   この春先のあの騒ぎの覚書。

   1月の終わりにトイレットペーパーの定期買い足しをしたときに、「従来品の??%増し」で巻いてあるので買い替え頻度が減ってお得というペーパーに変えたところが、2月末の段階でそれの封を切って、巻が多い分ひとパックが6個ぐらいしか入ってなくて、やっぱりなんだか心もとないわね、今週末もうひとパック買っときましょうかって気持ちになって。ところが3月頭は例の箱根温泉ガラス旅で、買出しに行けなかったのでした。

   「ってわけで、今週こそトイレットペーパー買いに行こうと思うんだけど」っていってたら、なんだか世間はトイレットペーパーが足りなくなるんじゃないかって話になって。
    いやまさかそんなコロナとトイレットペーパー全然関係ないじゃん、昭和のころじゃあるまいし。だいたい早乙女さんちみんな日中仕事でいないんだからトイレ使う人いないんでしょ、週末買いに行けばいいわよって言われて、あははそうですよねーって3月第1週はのんきに過ごして。って、あとでブラセリーカサイのママに聞いたら、その2月の末に一気にトイレットペーパーは店頭からなくなっていたのでした。

   そうでない去年以前も、よっぽど切羽詰まったときでないとノイエ・リリエンベルクの駅でトイレットペーパーなんか買ったりしてません。バスにそんな大物持って乗りたくないし、仕事の帰りは食品を買って帰ってるんで荷物増やしたくないし。
   買うとしたら、イオンと小田急スーパー、それから薬局が駅の北口と南口、エルミロードにイトーヨーカドー入ってたかな。

   一応ラインの自分の撮った写真を会社の熟女と共有してた記録出してみたら(マスクの売り切れ情報など共有してた)、3月3日の時点で小田急スーパーには欠品のお断りが張り出されていたのでした。

   「大丈夫ダイジョブリーリエマート行けばいいんだから」

   おかあさんまだそのころは余裕。一応、毎日駅の周りはチェックしたけど、既にイオンと南口のドラッグストアでは影も形もなくなってました。

   「そういえば、うちの会社の一階トイレの個室に配備されてた予備ペーパー、今日は一個しかなかった」と熟女のヘレンさん。

    待ってー! 事態はそこまで切迫してるの!?

   「朝イチだったからじゃない? あとは、1階はいろんな人が入り込んでるから多少用心してるのかも。うちの会社のフロアはID持ってる人じゃないと入れないからちゃんといつも通りダースで配備されてた」   

   「ああ、そうなのね、ごめん」って、ヘレンさんはいつも理知的な方です。

   「うちの旦那のよく行く会社の近くのセブンはペーパーが切れたのでおトイレ借用禁止になったって」

   「ぎゃー!?」(慌てふためくスタンプが入ってました)

   「我が家は古Tシャツを小さく切ってティッシュの代わりにしてるけど、さすがにトイレには使えないわね」ってヘレンさん。

   「いや最悪の場合、ウォシュレットでよく洗ってぼろ布で押さえてそれは燃えるごみ出すことも考えてる。

    ただし、うちこの夏ウォシュレット買い替えた時に旦那が設置したところで力尽きてまだホース繋いでないの!

    旦那にウォシュレットを使えるようにしてもらうべき!?」

   「早乙女さん旦那さんに頑張ってもらって!」ラインは一時騒然……。

    そしてデスクで使っていた鼻セレブも切らして(花粉症です)、会社の下に入っているセブンイレブンに買いに行ったら鼻セレブどころか普通の箱に入っているティッシュペーパーも欠品していて、これは本格的にやばいのでは? となって。

    その週末、一山越ええていつものリーリエマートに行ったらほんとにトイレットペーパーの棚ががらんとしていて、ひと家族様一品限りになっていたので、目の前にあった小さい4個入りパック、うっすらピンク色で香水の香り漂ういつもだったら絶対こんな高級品使わないわってのを約400円で売ってたのを、ジャンプしてキープしたんですが。だってすぐ横にご主人をともなった大奥様が買おうかどうしようか迷ってたたずんでいらしたので。

    ……ちょっと横に398円で12個入りのも売ってたみたいよ。でも、わざわざジャンプしてまでとびついたのを捨てて別のにするのは恥ずかしかったのでそれ買ってきました。くぅーっ痛恨の一事。

    そのころお隣の席でいろいろこのトイレ紙苦労話を聴いていただいてた熟女のえすこ様(ちょっとSなご気性から)にその話をしてもう皇族の方みたいなノーブルな笑みで「良かったわね」と言ってもらってたんですが、

    「とうとう例の香水入り4ロールに入ったんだけど、なんとこのロールにはちゅうりっぷの絵まで描いてあったの!」

    「まあ!」

    「それで、いつもの通りぴっと紙の端を引くと、その勢いに負けてミシン目でぴっと切れてしまうの。

     またピッと引くと、また最初のミシン目で切れてしまうの。だから、3回目はそーっと引き出して、必要量を巻いて、そーっと切ったの。わたしはこのペーパーを使うには淑やかさが足りない、

     なんと わ た く し は い か に 野 蛮 人 な の か と い う こ と を
         こ の ペ ー パ ー に 教 え ら れ た の !」

    「まあ、よかったわね(ノーブルスマイル)」

    しかもですね、そのあとまたそのリーリエマートに行って、ほかにペーパーはないかと売り場をじっくりと見たら。

    「落とし紙が売っていました
    「なあに?」えすこ様ホーリー&ノーブルに問い返されます。
    「あの、巻いてない、ぼっとんのトイレのときのペーパーですよ、田舎のおばあちゃんちで使ってたの昭和のころ見たことある。あれ知ってる最後の世代が私たちですよね、使ったことあります? そういえば、東日本震災の紙がないときもあそこで見たわ、あの時は、あまりにも紙がないから倉庫から出してきたんだと思ってた、今でも作ってるんだ、何に使うんだろ」
    「知らないわ」にっこり。

     次の週、事情通のブラセリーカサイのママに聞いてみたら、
    「通年売ってますよ、なんか聞いてみたら、ワンちゃんのお散歩のときに始末をするために使ってるって」
     なるほど、あれティッシュなのかと思ってた。あれでつまんでヴィニルの袋に入れて持って帰って、落とし紙なら水洗に流せるからご自宅のトイレに流しちゃうんだ。ペット飼ったことないから知らなかった!

     と、また月曜日にえすこ様に報告すると、
    「うちはあらかじめヴィニルの袋の中にペーパーがセットしてあるのを使ってるわ」
    「その場合は中身だけトイレにポイですか?」
    「袋ごと燃えるゴミね」

     この機会にいろいろと知らないことを知ることができました。

     そして、ネットで見るには、ペーパー不足という消費者の不安状況を打破するためにイオンはペーパーのお徳用パックでお城を作って、

    「幾らでもありますからどうぞお買い物してください、どれだけ減ってもすぐお城を作り直します」ってやってたというのにうちの近所のイオンには影も形もない、あれはどこの国のイオンの話なのだ、うちの近所が川崎のチベットと呼ばれているへき地だからなのかと言っていたら、虎美が、

    「おかあさん、あれは阪神大震災を経験したもとダイエーの社員の人がお客様にご不自由をさせてはいけないというダイエー魂を出してやってくれたことなんだって。ノイ・リリのイオンはもとサティのイオンだから、ダイエー系列じゃないから無理なのよ」とまた眉唾な話を教えてくれたりして。

    もうトイレットペーパーもティッシュペーパーも買えるようになってきたから忘れないうちに書いとく。

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2020年4月26日 (日)

指輪の選んだ婚約者 - 大団円お見事! -

   ステイホーム支援。

   やっぱハッピーなのがいいでしょうって、ちょうどピクシヴ更新あったからご紹介。「指輪の選んだ婚約者」茉雪ゆえ、早瀬ジュン(漫画)。なろうの原作は一応完結済み。47話プラス番外編少々。コミカライズはやっぱりカドカワフロースコミック。ピクシヴやコミックウォーカーで一部無料公開されてます。コミックはシーモアでも購入可能。

   きゃわいい伯爵令嬢だけどちょっと変人のアウローラちゃんのオタク趣味のターゲットは刺繍。ホントは刺繍のプロになりたかっただけあって技術はお嬢様の趣味の域を超越してプロレヴェル。夜会に出ても、美形を追っかけするよりレディたちに交じって噂話をするより、黙って壁の花になってお集りの紳士淑女のお召し物を鑑賞するのがサイコーに幸せなひととき。ところが、大きな夜会に久々参加したら、ちょうど珍しい方が嫁取りにご出席されていたようで、そのどたばたのとばっちりを喰らってしまいます。

   「この指輪を放り当たった女性が我が妻である!

   氷の貴公子と呼ばれる超絶ハンサム侯爵家の跡取りクラヴィス様、ちょっとヤケになってたみたいよ。

   翌日土下座して事情をゲロッたうえで、昨夜の騒ぎのおかげで求婚の申し込みがなく心安らかな朝を迎えられたから、当分縁談除け期間限定婚約者をやってくれないかという失礼な申し出をするという残念ハンサムでした。

   心優しいというかおっとりアウローラちゃん、なんだか可哀そうになって、
   「お受けします(私も結婚しろと言われなくて趣味の刺繍に打ち込めるし♪)」と答えちゃう。
   弟があまりにもハンサムなのにコミュ障で困ってたお姉ちゃんの公爵夫人が電撃訪問して
   「愚弟を見捨てないで!」とやってきたことでもあるし。
   はた目には美男美女の新しいカップルが誕生したのでした♪

   「ローラ、お前一体
    昨晩何したんだ?」と、美形姉弟が去ってのちお兄ちゃんの質問に
   「……慈善事業? かしら」と答える(アウ)ローラちゃん。そう、おっとりローラちゃん、じつはしたたかでした。

   ところが、ローラちゃん失われた魔女の能力を微力ながら持っていることが判明し、その能力と熱い刺繍への想いが密接に絡み合って、おっとりしたたかな立ち回りもあってコミュ障残念ハンサムなクラヴィス様を強力にバックアップし始めるのでした。

   お? やけになったとんでもセレクトと思いきや意外にも良縁?

   少しずつ心を通わせていって、最後には収まる処に納まるハッピーエンドはほんとに美しい話だったとため息が出ます。

   これはコミカライズも美しいですが、服飾の書き込みがスゴイ。今のはやりはこんなドレスだけど、これをそのまま着ていくと可愛いけど絶世の美女までいかないローラちゃんでは少し見劣りがする、ドレスで差をつけないと。それではこのように工夫しよう、そういう流れがほんと詳しくて、でもそんなに素材とか技巧に詳しくないわたしが読んでいてイメィジしやすくてワクワクする。これは原文で読んでもらいたいです。

   「大奥」よしながふみでの、お万の方好みの裃や、「徳川の女人たち」吉屋信子の同じくお万の方のデビュウの墨絵の打掛のような、ヒロイン(「大奥」のお万の方は男性ですが)を彩る秘密兵器であるところのお召し物のように描かれるローラちゃんの工夫を凝らしたドレス、デビュウのとき一度きりでない波状攻撃なところがまたよみでがある! 作画の方もこれから先大変でしょうけど楽しみにしてます。どうぞ、お集りの方も楽しんでください。

   そして、最後の、これは必然の運命だったという落ちが最高にカッコよかった。何度も読み返してしまうにんまりハッピーエンドです。

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聖女の魔力は万能です ー ナチュラルいいじゃない ー

   またしてもステイホーム支援のご紹介。

   「聖女の魔力は万能です」橘結華、作画藤小豆。乙女向け召喚ものの一大メジャー。「なろう」の原作は第三部111話まで更新中。コミカライズはカドカワフロースコミックで連載中で、各種オンラインサーヴィスで無料で読めます。コミック版はシーモアでも電子で買えます。絵がきれいで見ていて楽しい。色使いも素敵。

   ちょっと社畜の疲れたおねえさん、小鳥遊聖(タカナシ・セイ)さんはある夜異世界に召喚されますが、問題なのは一緒に可愛い女子高生が召喚されたダブル召喚だったこと。待ち構えていた王子は見た目可愛いその女子高生アイラちゃんに飛びついて聞いちゃうのです。

   「貴女が聖女か?

   よっぽど大物じゃない限り、即答ではいって答えられないと思いますけどコレ。

   恋に墜ちたんだかどうなんだか、二人の世界を作ってしまった王子とアイラちゃん、さっさとどこかへ行ってしまいました。取り残されたセイさん、静かにキレながら事情をきこうとするも、みんな「王子の聖女」の方に気を取られてハッキリした説明もなく放置放置放置……。

   そりゃあ、キレるわ。

   ところが、神のイタズラか、喪女力をこの世界で魔力というんだか、暇を持て余したセイさんどんどん謎の力を発揮していくのです。これがまた、常識外。ほかの術者が汗水たらして作り上げるポーションを楽々量産したり(しかも効果が謎の5割増し)、顔見知りの騎士さんが魔物退治で四肢欠損したら、治った方がいいよね? と楽々再生。

   なろうで有名な「俺やっちゃいました?」系ですよこのおねーさん!

   しかも、乙女向けとしてふつーに逆ハーレムですから! 淡々としていて、もててもてて困る事案は起きてないけど、すべての発端、暇を持て余して薬草園にお散歩に来ていたセイさんを
   「薬草に興味あります?」と見事に薬用植物研究所に勧誘したふんわりジュードさん、王宮から内内にフォローをお願いされてた研究所の所長さん、その友人でセイさんの五割増し上級ポーションの効果で一命をとりとめた騎士団の団長さん、セイとアイラちゃんどちらが聖女なのか、セイさんの能力をを確かめるために派遣された魔術師団長さん。みなさんキラキラした美形で、

   「なんなんだこの部屋の美形率は」とセイさんもあきれるほど。

   その他、諸悪の根源王子といい、団長さんのお兄様である魔術師団の副団長であるインテリ眼鏡様、もちろん国王様も、皆さま美形ぞろいでいらっしゃる。ああ、目の保養。メインは団長さん。命の恩人への感謝以上の好意を見せてくれて、それが中高生の初恋みたいなほほえましさなのを、周囲が見守ってくれてる可愛らしさが好ましい。皆さん(諸悪の根源王子以外は)セイさんに好意的で優しくセイさんが物理的にも精神的にも辛いことがないように図ってくれているのでほんとうらやましい。いや、約一名自分の知的好奇心を満たすためだけにムチャ振りするひとがいたか……。

   もう日本には帰れないらしいけど、勤勉で周りの人に笑顔でいてもらいたいと心掛けるお姉さんにとっては非常に暮らしやすい召喚聖女生活なんじゃないでしょうか。

   聖女として魔物討伐にも積極的に参加し、結構怖い目も見るし、聖女としての奥義技が出せなくて追い詰められたりもするけど、そこそこ承認欲求も満たし、ほのぼのとした好意的な美形やお嬢様との交流、舞踏会やらお茶会やらなどを経験して、みんなに慕われる穏やかでハッピーな聖女生活を終えられたらいいんじゃないかな。

   ほんと、セイさんにひどいこと言ったりやったりするひとがモブから国の重要人物までほとんどいないので、安心して読めます。侍女さんたち、騎士さんや研究員さんたちがみんな優しくてプロフェッショナルなのがいいです。自分もこういうモブでありたいものです。

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2020年4月19日 (日)

千歳ヲチコチ ― 時空を超える共感 ―

   明日っから仕事と思ったら筆がのるのる。

   LINEコミックでおすすめされてたから一巻無料読んだらはまるはまる。シーモアで買いなおそうと思って検索かけたらまさかのシーモアでのサーヴィスなしで、そろそろ電子コミックのサーヴィス一本に絞るために解約しようと思ってたRenta! の方調べたらあったので久々にチャージしてお買い上げ。やっぱりサーヴィスの使い分けって必要? なんでも複数チャンネルを確保しておくことが大切なのかな。

   「千歳ヲチコチ」D・キッサン。平安ものです。
    時は平安、パパが太宰府に単身赴任中なので気楽な女所帯暮らしのお姫様、チコちゃんは平安ものの例にもれずユニークな方。昆虫に思いを寄せたり生き物は積極的に触りに行ったり雷の日はかえってテンション上がったりと、やんごとなきお姫様としては規格外で、いつもおつき女房の長山さんに怒られるけど、学者のお家柄にしてはおおらかな乳母の仙河さんにフォローされて、親友のなり姫ちゃんとも仲良く楽しい日々を送っています。パパは物語がかなり進むまで出て来ないのでどのクラスかわかりにくいですが、「ざ・ちぇんじ」みたいに自分が入内とかは無理メの家柄みたいよ。宮中でそれなりのお方のところにお勤めできれば幸いっていうリアル紫式部クラス?

   事件は例によって昆虫についてアツく語った(とはいえみやびな言葉遣いで、現代人感覚ではおひめさまらしい優しい語りっぷりと読めますが)が突風で飛ばされ行方不明になったこと。これは文の内容を問わず文使いの失態です。個人情報の流出だ。それを拾った公達が読んで、へえ、と興味を持ってなんと返信を認(したため)めてくれたのです!

   拾い主の享(とおる)くんが弁(わきま)えのある公達だったので、強引に恋愛関係へ持っていこうという野心のにじんだ感じにならず、相手に警戒心や羞恥心を起こさせないように貴婦人からの手紙を装った文体や渡し方になったので、物語はそんなに色っぽくもスリリングにもならずに進んでいくのでした。

   「秋の風にとらわれたあなたの手紙が 
    まるで天女の衣のようにわたしの心をとらえました
    はしたない心をお許しください
    私は香りすら残しません」

    問題児なお姫様がはじめて人様と文を交わした、ということでおつきの女房連中もふわーっとなってしまう幕開けでした。親友なりちゃんは乳母同士が姉妹と後でわかる。人間関係狭いね。 

    これうまいですよ。みそひともじになってないからこそ、かえってスルーされないで読者の心に染み入る。そして、平易で穏やかな詠みっぷりから亨くんの真面目で優秀なところがにじみ出る。控えめだしね。
    こんなカンジで、この作品は平安ものとして折々に和歌(らしきもの)が物語に密接に絡んできますが、解りやすくて世界観をちゃんと作ってる。  

    そして始まるすれ違いらぶ♪

    宮中に出仕してないチコちゃんとおうちの方針で同じく大学寮の学生やりながら内舎人やってる亨くんとでは出会う機会もないんですが、そこは、婚活のため出仕することにしたなりちゃんの引きでチコちゃんも宮中に出入りするようになり、例によって平安京の姫君ではあり得ない大活躍をしながらどんどん距離を縮めていくのでした。

    いや、ほんっとハラハラドキドキ、序盤全然かすりもしないんだもん。ハッピーエンド無理か!? とか思っちゃった。いやこれでハッピーエンドならなかったら結末つけようがないけど。
 
    けっこー調べ切った感の平安絵巻が勉強になるなる。五節の舞姫のオーディション事情とか、宮中の年末年始のイヴェントとか、息子を披露するホームパーティとか、平安ものでは裏事情まではあんまり詳しく描写されてなかったと思うけど、すっごく詳しくてそれでいて波乱万丈で面白かった! すっごいまともな平安時代日常ストーリーなのに登場人物が個性的なもんでムッチャ楽しい。チコちゃんだけでなく、留守宅を取り仕切る有能な女房の長山さんが美少年愛好家でなりちゃんの文使いOROSHI(美少年三人組ユニットw)にめろめろだったり、亨くんのエネルギッシュなパパ上とか、亨くんのママ上とそれを支えるパパの愛人さんたちとか(号令ひとつで集合してパパからのプレゼントを見せ合ったりする。怖いw)。割り切った現代語を駆使して楽しくわかりやすく描いてくれてるので、これが1000年前の話という距離感は全然感じませんでした。

   たとえばね。亨くんの仕事仲間のサリーって、実在の藤原佐理(ふじわらのすけまさ)だったらどうしよう。史実どおり能書家ってことになってますが。となると時代は三蹟のほう、コウゼイ、サリ、トーフーなら藤原黄金期になりますね。わりとアバウトなひとだったようですが、作中では結構女性関係が派手。お気に入りの筆がウサギの毛なので「ピーター」、これを怨霊退治で壊しちゃったので代わりに陰陽師の大江さんからもらった筆が狸の毛だから「ラスカル」って名付けちゃったりするノリ。これを面白がれるならおススメですね。楽しかった♪

   氷室冴子の「ざ・ちぇんじ」と「なんて素敵にジャパネスク」に始まったジャンル。これコミカライズの山内直美さんの力量もありましたけど、あと、「きらきら馨る」高橋冴未、これもLINEコミックで読んだ、浸った。そういう、平安時代ものの少女漫画もジャンルとしてちゃんと存続しているってのは、大したもんだと思いました。日本の乙女の趣味の多くはとおくこの時代に源流を発しているので。心を一つにできますよ。全然大丈夫。

   追い風は千年前から柑橘系
    振り返りたい自分に笑う    舞音

 

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2020年4月18日 (土)

払暁 ー いろいろもったいない ー

   パティさんから、缶詰生活のお供になにかおススメをと入信がありまして。

   「払暁 男装魔術師と金の騎士」 作:戌島百花 絵:明野たわ。シーモアにリンク張ってみましたけどうまくできてます?

   タイトル落ちで実に趣ある表題にイマドキのサブタイトルついてて残念なんですが、ぶっちゃけこの「男装の魔術師」ってところに引っかかって読んだのでわたしが言える筋合いじゃないです。ほんとベルばら趣味でスイマセン。そして原作小説にもこのサブタイトルついてたのでほんとビッグなお世話ニア。おかあさん少し落ち着こう。

   召喚されたもと女子高生というプロフィールの魔術師ハルカくんはちょっと見美少年。隣国からの侵攻を受けて国民総動員状態の召喚先の国で、赤紙が来たお師匠さん(既に死去)の代わりに男装して従軍しました。間違い召喚で力も必然もなく異郷に放り出されて途方に暮れていた自分に優しくしてくれた村の人たちに報いたい、自分でできることを返したいというけなげな心で立ち向かうには激戦地のヘダリオンは過酷すぎ。魔法で敵を吹っ飛ばし、魔法で味方を癒す獅子奮迅の大活躍。心身ともに限界のハルカくんがであったのは美形の重傷の将校さん? 渾身の救命治療を拒む姿にハルカくんブチ切れて要らん賭けをしてしまう。

   「お前が捨てようとしているその命
    私が拾ってやる

    私のために
    生きて
    私のために
    死ね」 

   なにより心が死にかけだったその将校さん、聞くと伯爵家のお坊ちゃんのリカルドは従属の禁呪まで使って約束を果たし、ハルカくんに懐きまくってしまうのでした。

   しばらくはあの宝石商のリチャードさん並みの金髪美形に傅かれ、元傭兵のアルフレドにボディガードをしてもらって甘々優雅な静養生活を送りますが、激戦地を守り抜いた英雄魔術師の名は高まるばかり、英雄に憧れるショタは飛び込んでくるは、敵国から刺客は忍び込むは、ハルカくんもお屋敷に引っ込んでいられなくなります……。

   社交界にとうとう顔出しするためのパートナーとしてリカルドが調達してくれた才色兼備のご令嬢セラフィちゃんがいいっ! 華やかで勝気なだけでなく、伯爵家のご令嬢として嗜みが優れていて、ハルカちゃんが政治的に利用されないよう巧みに防波堤になったり、女性の友人として精神的な支えになったりと大活躍。

   公式の場に出るときのフォロー要員として以外にも、ハルカちゃんとの文通できゃっきゃしていたように書いてありますが(原作にも記述アリ)、ここんとこもう少し実例エピソード欲しかったわあ。セラフィとはもう仲良し♪ な描写が足りないから横恋慕王女がリカルドを奪おうとしたときの名アシストが唐突に思われて。ついでに主様にガールフレンドができたと思ってジェラシっとるリカルドくんの微妙な表情ももう少しわかりやすくしてほしかったです。対外的にも仲良しが知れ渡ってるからこそ、セラフィちゃんとしては(横恋慕姫に負けちゃダメ!)という渾身のフォロー、めくった右肩大ゴマの

   「今日は特別
    別れがたく
    思いますの……」が効くんじゃないかぁ! もう可憐な中にもちょっとエロスな百合っぽい雰囲気がおおっとなりました。

   そんでもって、一身上の秘密……が二個も三個もあるけどこのヒト、を明かしたあとの、

   「私の大切な友人が
    ありのままで
    いられないなら」という泣かせる(いや言ってる本人が泣いてる)名台詞に繋がるのでした。武辺の家の娘で自らも戦地に赴きたい愛国者という前振りからのこのセリフですから。それだけハルカくんに入れ込んでいるかが知れます。
   
    もう、最高、こんな友人ができたんだからハルカちゃんこの世界来た意味あったよ! セラフィちゃんいい婿捕まえていいマダムになってね! 戦場に出て国民を守れないことを苦にしなくていい、あなたのその魅力でこの国をよくして行って!

    まあ夜会でハルカくんを護る名シーンは他にもありますけど、心でハルカくんとつながって、……もしかして女性? と疑いを抱くシーンを入れておいてほしかったなあ。

    リカルドとしては主様が23才の健康な男性と思ってるからここはらわたがちぎれるような気持になってると思うけど、でも横恋慕姫のアプローチ後だからお泊り容認するしかないつらみィ! そりゃ翌朝即行迎えに来るよなあ! いや成人男性なら過保護だろ。そんでもってこの世界は他のイマドキの小説世界とは違ってまだ同性愛に禁忌感あるっぽくて、リカルド自身も、友人グラハムも、男にそんな気持ち持っちゃうわけ!? ともだもだしているのがおかあさん的に好感を持てます。さいきんは男でもいいじゃんいっちゃえっていう世界観普通なので。

    そして英雄ハルカくんを貶めようとするやつらが放った最大のスキャンダル……ハルカくんは傷心を抱えて旅に出ますが……当て馬アルフはいちいち思わせぶりですがまあ役割だからね、しょうがないね。

    ハルカくんは立ち直り、自分がこの世界に召喚された役割を果たし、そして。

    ここんとこが最大の残念ポイント。打ち切りだったんでしょうか。予算のない大河ドラマ後半の合戦シーンみたいでした。えーっ、原作はそれなりにハルカくん頑張ってたのに。

    なにより心が強い。召喚されてチートついてないなんて十二国記の陽子よりひどい目に遭いながらも自分で魔法を学んで国を救う英雄級にまで成長し、真実を知ってもなお前を向き甘い愛に溺れず自らの役割を果たそうとするハルカくんに敬意が静かに沸き起こります。

    そしてね、残念なのはお師匠。間違って召喚してしまった、これから花開く直前の乙女に対して、何ができるのか。何をもって償えばよいのか。自らの魔術の全てを教えるしかなかったのか。そこんとこ私は突っ込みたかった。木彫りの熊なんか作るくらいしかできなかったのか。マッド・マジカリストだから女性の関心を得る方法にも疎かったのか、追放の身ではわかりやすくドレスや宝飾品を与えて機嫌を取ることもできなかったのか。この世界のことを何にも知らない、自分に依存するしかない乙女を目にして愛欲の方へもつれ込むことはなかったのか……師匠腹上死じゃないよなとまで考えましたよ、ごめん。

    美青年に傅かれながら当惑は最初だけで、母似の美貌にコンプレックスを抱くリカルドを精神的に解放してやったりと、そういう主としてのふるまいのドキドキも楽しめました。従属の契約を受け入れた後は、主としてふるまおうと心掛けているところもあり、所々見せる少年でありながら主という倒錯した雰囲気がちょっとクル。あなたは弱い、守らせろ、とまいど誘惑してくるアルフのこともまいど断って。そういう、悩み苦しみながらも前を向いて立ち上がる、立ち向かうヒロイン。もっと読んでいたかったな。そういう残念。どうぞお試しください。

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2020年4月16日 (木)

熟女は微妙なお年頃

   ホルモンがいろいろで体調の良い日がありません。

   「早乙女さん、きょうはどうよ?」

   「バンバンの『イチゴ白書をもう一度』状態で」

   「……どーゆー意味?」

   「♪もう若くないさと君に言い訳

    またある日には、

   「昨日眩暈でお休みしてたよね、元気になった?」

   「教会に呼び出し喰らった後のガリレオ・ガリレイ

   「やーだーなに?」

   「それでも地球は回っている

    ちょっとでも気の利いたこと言ってウケを取らないと生きていけない。

    そして仕事をさぼった今日のところは西野カナ? そのココロは、

   「あー痛くてあー痛くて震ーえーるー

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